もの凄く久しぶりに本のエントリ。
クリスフォードストールについて「カッコーはコンピュータに卵を産む」で クラッカーとの攻防を繰り広げたと言う事しか知らなかったなのだけど、 こんなのを書いていると言う話を、つい最近某所の関連から知って読んでみました。
システムデザイナーはみな、イェール大学コンピュータ科学部教授デビッド・ジェランターの次の命題を復唱すべきだ−−テクノロジーが果たすべきもっとも重要な義務は、人間の邪魔にならないことである。機会は人間の生活を楽にするものであるべきだ。無用な機能や拙い設計は、テクノロジーをはた迷惑なうぬぼれ屋にするが、人を助けるものにはしない。
[13章: 醜いコンピュータより引用]
邦題はかなりダメな感じですが、原題もまた "High-Tech Heretic: Why Computers Don't Belong in the Classroom and Other Reflections by a Computer Contrarian (ハイテク異端者: あるコンピュータ批判者によるコンピュータが教室にあるべきでない理由及びその他の考察 *1 )" と、かなりニュアンスが取りにくのでこれは仕方ないかな。 この堅いタイトルもユーモアのようで、本文の文体はカッコーと同じく軽快で読みやすいです。 ってこんな堅いところばっかり引用しておいて言うのも何ですが。
学習とは情報を入手することではない。最大限の効率化を図ることでも、楽しむことでもない。学習とは人間の能力の発達を可能にすることだ。「楽しい」を勉強にすることは、僕らが人間としてなしうる、もっとも大切な二つのことを侮辱する。その二つとは、教えることと、学ぶことだ。
[2章: 楽しい楽しいお勉強 (引用にあたって括弧を追加している)より引用]
そして内容は原題通り、コンピュータを生活に、特に教育に持ち込むことの弊害について書かれています。 と言ってもコンピュータを撤廃しろとかいうことではなく、 大げさな誇張や夢物語に眩惑されずに、ちゃんと評価し考察しようと言う話。 主張自体に目新しいところはない(何せ1999年の本なので)のだけど、凄いのは調査の広範さ。 ニュース、コラム、論文、インタビュー、書籍その他から膨大だけどコンパクトな引用に 著者自身の体験も交えながら、これでもかというくらい懐疑論が展開されています。 しかし、それにもかかわらずあんまり重暗くならず読みやすいのが素晴らしい。
*1 訳のアドバイスありがとう